無期転換されても正社員になれるわけではない?
無期転換ルール
労働契約法第18条では、有期労働契約が同一の使用者との間で通算して5年を超える場合、労働者の申込みにより、契約期間の定めのない無期労働契約へ転換することが認められています。
たとえば、契約社員として2020年4月1日から1年契約で勤務を開始した後、この契約が繰り返し更新された結果、2025年3月末日で5年に達した場合、次に締結される2025年4月1日からの契約は、満了時点で通算6年となるため「通算5年を超える契約」に該当します。
この契約の開始後に労働者が会社に対して無期転換の申込みをすれば、使用者は原則としてこれを拒否できず、労働者と使用者との間で無期契約が成立します。
ただし、これは正社員登用を意味するものではなく、あくまで契約期間のみが無期限になるという仕組みにすぎません。
無期転換後も、原則として有期契約時の労働条件(給与・労働時間・福利厚生など)はそのまま継続されます。つまり、雇用は安定するものの、待遇面での向上は必ずしも保証されません。このため「無期契約の非正規社員」という立場になるケースも多く、昇給や昇進の制度がないまま働き続けることになりがちです。
パートタイム・有期雇用労働法の適用に注意
他方、有期契約の労働者・パートタイム労働者は、同じ仕事をしている無期契約の労働者との待遇差について、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)によって、有期契約であることを理由とした不合理な取扱いをすることが禁止されています。
注意すべきは、これらの労働者も、無期契約へ転換した場合は有期契約の労働者としての立場を失うため、この法律の保護対象外になる可能性がある点です。
その結果、正社員との待遇差が存在しても、訴える法的手段が限定されてしまう点に留意しなければなりません。
まとめ
無期転換ルールは、雇用の安定化を目的に導入されたものですが、転換前と後でどのような変化があるのか、また自身の契約内容や待遇の改善の可能性について、無期転換の申し込みをする前にしっかり確認することが大切です。必要があれば、企業の人事担当者との面談や、就業規則の確認をすることをお勧めします。